安部公房の作品に「未必の故意」というものがあります。1971年に発表された戯曲です。
「未必の故意」というのは、法律の専門用語のようですけど、わりと市民権を得ている言葉なのではないでしょうか。
ググってもらえば、大体の意味はわかると思います。
この作品は、1962年に現実にあった「姫島村リンチ殺人事件」を題材にしています。
また、戯曲として発表される前にテレビドラマ化されており、その脚本を書いたのが「安部公房」ですね。
「姫島村リンチ殺人事件」というのは、簡単に概要をいうと、反社会的勢力と繋がりのあった兄弟がそれをバックに島の住民にやりたい放題、それに耐えかねた消防団長を中心とする住民が集団で兄弟を撲殺してしまった、というものです。
裁判では、首謀者は実刑判決、その他の関係者は執行猶予の付いた比較的軽い判決だったとウィキペディアにはありますね。
「暴行は懲罰目的であり最初から兄弟の殺害を意図していなかった」と判断されたようです。つまり、故意(未必の故意も含まれるのでしょう。)ではなかったと判断されたということですかね。故意かそうでないかでは、例えば、殺人罪と過失致死罪の差がありますから、重要だそうです。いずれにしても、心のウチの話になりますから、判断は難しいんじゃないでしょうかねえ。
さて、安部公房の戯曲の方は、消防団長が、よそ者であるAを計画的に殺害し、それを過失によるものと判断させようと、色々と画策する話です。
反対側からのアプローチということになるんじゃあないでしょうか。
内容は、裁判でどのように証言するかを練習するシーンを通して、何が行われたかが明らかにされていく感じですね。ラストは唐突に終わります。
この本、昔は、文庫であったように思うのですが、今はリストに見当たりませんね。
私は、この↑版を、たまたま古本屋で見かけて手に入れました。
読んでみると、今だと使い難い言葉がでてきます。ひょっとすると、そんなところも、文庫のリストに載ってない理由なんですかねえ。良くは、わかりませんが。
話は変わりますが、よく法律を勉強されている方の笑い話として、「未必の故意」を「密室の恋」だと勘違いしていた、と言うような話を聞きます。
私は、「そんなわけねーだろー」と思っていますね。
どういうシチュエーションで、この単語が会話に登場するかを考えるとですね、そんな勘違いしないんじゃないですかねえ。
実際のところ、どうなんでしょう。
一種の都市伝説ではないんでしょうかねえ?
まあ、こんな本もでてますけど。
あまり心地よい話ではありませんでしたね。
でわ、また。