「Feeling Good」という曲があります。曲名は別にして、聴いたことがあるという人は、おそらく、ホンダのアコードのCM(2013年)で、使われていたのを耳にしてのことだと思います。僕もそうです。あれは、マイケル・ブーブレのヴァージョンでしたね。彼の2005年のアルバム「It's Time」に収録されています。
アカペラで歌い出して、バーンと、オケの入る感じ、かっこいいですよね。
原曲は誰が?
よくよく調べてみると、ブーブレのオリジナルでなく、もともとは、「ドーランの叫び、観客の匂い」というミュージカルのために書かれた曲だということがわかりました。
アンソニー・ニューリー(Anthony Newley)作詞、レスリー・ブリカッス(Lesly Bricusse)作曲だということで、ニューリーのアルバム「Who Can Turn To」などに収録されています。
原題は「The Roar Of The Greasepaint-The Smell Of The Crowd」というんですが、これを読んでもなんのことだかさっぱりわかりませんよね。
邦題の方も直訳っぽくて、日本語として意味不明だと思うのは私だけではないと思います。
「Greasepaint」が「ドーラン」(顔とかに塗るやつね。)、「Roar」が「ほえる」とか「咆哮」という意味なので、そうなるのはわかりますが、これなら私でも訳せそうです。
どんな場面で歌われた
「ドーランの叫び、観客の匂い」は、1964年に初演となった、イギリス社会風刺ミュージカルで、「Feeling Good」はその挿入歌として作成されました。
ミュージカルの内容は、2人の白人男性、サーとコッキーの物語をとおして、イギリスの階級社会の理不尽さを描いています。
いつも、サーに良いように扱われていたコッキーが、終盤で登場する一人の黒人男性、ネグロがきっかけで、サーと自分の関係を見直すことになる、みたいなストーリーのようです。
つまり、サーが階級社会の上部の、コッキーが下部の象徴であって、常にルールを決めるのは、上部に位置するサーであり、それ故にコッキーは人生というゲームにおいて負け続けているという日常があったわけです。
ところが、そのサーを出し抜いて、ネグロがゲームに勝利する、それを契機にコッキーがサーとの関係を対等なものに変えていくわけですね。
余り、詳しいことはわからないのですが、この辺のリンクを読んでみると、そんな感じです。
The Roar of the Greasepaint - The Smell of the Crowd – 1965 | The Official Masterworks Broadway Site
「Feeling Good」は、その黒人男性が、歌ってるようです。
ただの、良い音楽というわけではないようです。何かすごい重さを感じますね。
誰が歌っている?
先程も書いた通り、ニューリーが自身のアルバムで歌っていますが、他にもたくさんの人が歌っています。ミュージカルが演じられたころ、1960年代の中頃には、サイ・グラント、ギルバート・プライス、ジュリー・ロンドン、クリス・コナーなどなど。中でも、ニーナ・シモン版が有名です。ジョン・コルトレーンも演っていますね。
サイ・グラントがユーチューブにありました。
Feelin' Good (original) - Cy Grant feat. Bill LeSage 1965.wmv
なんか、すっきりくっきりのイメージ。
近いところだと、マイケル・ブーブレの他、ジョージ・マイケル、ロックバンドのミューズ、プッシーキャット・ドールズ、エド・シーランなどなど。
マイケル・ブーブレとジョージ・マイケルは、よく似た感じ?ですよね。
アドリブが入ってますから
原曲のメロディがアタマに入っていると
より楽しめると思います。
お薦めは?
やはり、ちまたで一番のニーナ・シモン版ですか。なんだろ。力強さというか、重さというか、そういうものが後ろにあるようなイメージを持もちます。型にはまっていない魂の叫びみたいなものを感じるのは、僕だけではないと思うんですが、どうでしょうか。
MUSEも嫌いではないですけど。
まとめ
「もともとは、ミュージカル」の挿入歌だった「Feeling Good」ですが、ミュージカルでのシチュエーションを超えて歌われる心地よいスタンダードナンバーになっていますよねというお話でした。
ただ、忘れてならないのは、ミュージカルが「Feeling Good」を歌うネグロのキャラクターをとおして、差別を取り上げていると思われるところでしょう。
イギリスのミュージカルの歌が、当時のアメリカでヒットしたということは、そういう側面があるということなんでしょうね。
最後までお付き合いくださって、感謝です。
でわ、また。