スタン・ゲッツ。アルト・サックスの大御所ですよ。
リードを使う楽器は好きじゃないと言っているのに、
また、サックスかよ。
お怒りは、ごもっともです、はい。
でもね、聴いていて「心地よい」と思ってしまったんだから、それは、しょうがない話ではありませんか。
オ・グランジ・アモール(O Grande Amor)、良い曲ですよ。ボサノヴァですね。大いなる愛という邦題がついています。
「GETZ/GILBERTO」というゲッツの1963年のアルバムに収録されています。このアルバムでは、サックスをゲッツが、ピアノをジョビンが、ギターと歌をジョアン・ジルベルトが担当しています。
そもそもは、アントニオ・カルロス・ジョビンとヴィニシウス・ジ・モライスの曲ですね。この二人は黄金コンビということで、名曲をいろいろと残しています。
ゲッツのサックスには、柔らかなイメージがあって、僕は好きなんですが、ジョアン・ジルベルトの声は、そういった部分をさらに、強めていると思います。
そして、この歌付きのヴァージョンも良いのですが、僕としてはもう一つのオ・グランジ・アモールをお勧めしたいのです。
それは、1967年の「SWEET RAIN」というアルバムに収録されているヴァージョンです。このヴァージョンはヴォーカルがのっていない、インスツルメントのものです。
「GETZ/GILBERTO」に収録のモノより、若干テンポが速い演奏で、少し硬めな印象がありますが、かえってそれが、すっきりした感じに聞こえます。
パーソネルも30歳のロン・カーター(ベース)、26歳のチック・コリア(ピアノ)が参加していることもあって、みずみずしい新鮮さを感じます。ロン・カーターは、マイルス・デイビスのグループに参加したりしていて、経験的には若いということもなかったのだと思いますが、チック・コリアは、キャリアが3年ほどの頃でしたからね。
ピアノに関しては、歌入りのモノは3分過ぎから、インストのやつは2分半過ぎから、ソロが入るんですが、この二つを比べても、前者はベテランの余裕を、後者は鮮烈さを感じてしまうのは、僕が単に前もってプレーヤーに関する知識があるからというだけではないと思うんですが、どうでしょうか。
ちなみに、ゲッツは晩年(といっても50代後半ですが)ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース(Huey Lewis & The News)*1というロックバンドの「スモール・ワールド」(1988年)というアルバムにゲスト出演しています。
これはこれで、かっこいい。
「クール・ジャズのスタン・ゲッツ」ーO grande amor が心地よいというお話でした。
でわ、また。
*1:バック・トゥ・ザ・フューチャーの主題歌「パワー・オブ・ラブ」で有名